2012年9月5日

恩送り (1)



先月大連でお世話になったSさんの話しを、私のメンターに話すと、「とってもいいお話ね。それが本当の(恩送り)だね。」とコメントしてくれました。あまり聞かない言葉だったので、あとで調べてみました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%A9%E9%80%81%E3%82%8A



Sさんは、30代前半の女性で、大連の高校を卒業後、来日し、日本語学校、大学、大学院でバイオの研究をされ、中国に戻られ、現在は世界的に有名なコンサルティングファームで中国と日本それぞれのサイドでの新薬の治験、承認のコーディネートの仕事をしています。

空港に迎えに来てくださり、お友達に頼んで足の不自由な父のために大型のバンを借りて、彼女とお友達がつきっきりでドライバーとガイドを務めてくれました。父が車の乗り降りに苦労していると、抱きかかえて運んでくださいました。

Sさんとお友達は、週末ずっと私たちの観光につきあい、ウイークデーもホテルの移動、帰国日の見送りなど、忙しいスケジュールの合間を縫って、面倒を見てくれました。

こんなに良くしてくださったSさんですが、私達は今回はじめてお会いしました。友達の友達の友達がSさんというご縁でした。

「どうして、見知らぬ私たち家族にこんなによくしてくださるのか?」、理由を聞いてみました。

「私は、高校を卒業してから、すぐに日本に留学しました。最初は田舎の日本語学校、それから、大学、大学院を卒業後、帰国して恵まれた仕事につくことができました。私の両親は豊かではなかったので、仕送りはなく、私は日本でずっと工場、農家、居酒屋などでアルバイトしながら生活費と学費を稼いできました。睡眠時間はほとんど取れませんでした。日本語があまり上手でなかった時に、農家のおばあさんたち、工場のおばさんたちは、「Sちゃん、これを食べてごらん。」と、煮物や揚げ物を作って持ってきてくれたり、家に呼んでご飯を食べさせてくれました。大学院に入ってからは、中国語の先生のアルバイトができるようになったので、以前のように長時間働く必要がなくなり、研究に集中することができました。大学の先生方も本当に親身に私の面倒をみてくださいました。今の私があるのは、本当に多くの日本の方たちのお陰です。先生は中国を訪問してくださったり、私が出張や学会で日本に行く時にお会いする機会もありますが、おばあさんたちにはなかなか恩返しをするチャンスがありません。だから、日本からお客さんがあれば、私は頑張ってお世話をしようと思っています。」と話してくれました。

農家のおばあさん、工場のおばさんたちがSさんにしてくださったご恩を私たち家族が受けることになり、ありがたいやら、申し訳ない気持ちでいっぱいです。




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