2012年5月13日

Jくんと仲間たち (2)


Jくんは、以前もお話したように、日本人のご両親の元で生まれましたが、とても不幸なことがあり、11歳の時にアメリカ人のフォスターファミリーに預けられました。

それまで、正規の学校教育を受けるチャンスがなかったJくんは、生活環境がガラリと変わっただけでなく、学力、ソーシャルスキル、スポーツ全ての面で大きく遅れを取っていました。


努力、持ち前の負けん気に加え、フォスターファミリーの惜しみないサポートにより、高校卒業後は、UCLAに進学することができました。

名門私学にも合格しましたが、卒業後の負債の額を考え、州立を選んだそうです。親の助けを全く受けずに、卒業後、苦労してなんとか完済したそうです。でも、本来チャレンジをするべき20代に借金の返済に追われ、するべき経験ができませんでした。「失敗したら、いつでも戻っておいで」と言ってくれる親がいなかったので、思いきった冒険などできるはずもありません。

7年前から、大手映画製作会社で働いています。現在公開中の歴代興行成績を記録した作品の名前を聞くと、出席者の中学生の女の子から歓声が上がったほどです。

私は映画鑑賞が趣味なので、この会社の製作した映画を見るたびに、エンドロールで彼の名前を探します。残念ながら、一度も彼の名前を見たことがありません。

「僕は映画制作のための資金調達の仕事をしているから、裏方の名前は出てこないんだよ。」と笑っています。

フォスターファミリーに預けられた時が既にティーンにさしかかっていたので、子供の頃に受けた大きな傷の回復、他の人にはとっては、意識すらせずに親から学んでいるようなソーシャルスキルなど、身につけなければならないこと、乗り越えなければならない課題が多くありました。

でも、Jくんはあせらず、一歩ずつ欠けたものを埋めようと努力を重ねてきました。

そして、自分と同じような環境で苦しむ若者をずっとサポートしてきました。

彼に出会えたことで、人生が良いものに変わった若者が数多くいると、Jくんの親友が教えてくれました。

J君の目標は、「世の中をより良いものに変えていくこと。僕くらい人生のハンディが大きかった人間もいないだろうから、僕でもやれたということが、他の子どもたちの勇気につながればいいな。」だそうです。

今回のセミナーでも、子どもたちだけでなく、大人たちにも勇気をたくさんくれました。

Jくんは「どんなに辛いことがあっても、死んではだめだ。生きぬいて、ベストをつくしていると、必ず良い日もめぐってくる。」という生き証人です。




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