2012年8月17日

息子の幼馴染み(2)


Jくんをお世話してくださった
 Nさんのお宅のお庭



もう一人は、高校3年生の女の子でAちゃんといいます。Aちゃんのお母さんと私は高校時代からの親友で、私たちが帰国する時にはいつも会い、彼女たちがアメリカの私の家に滞在していたこともあります。

Aちゃんのお母さんがシングルマザーとしてフルタイムで働くようになったので、夏に私たちが日本にいる時には、Aちゃんは私の実家に泊まることも多く、息子とは兄弟のように育ってきました。

Aちゃんは姪っ子のように可愛いだけでなく、私にとってのよきアドバイザーでもあります。ぽーと会を始めたのも、彼女とのやり取りの中で思いつきました。

Aちゃんのお母さんは、高校時代大変優秀で、理数系も良くでき、希望すればどの大学にでも入学できるほどでした。本人は、解剖が怖いので、薬学部に進学したいと希望していました。しかし、親御さんが、「なにも女の子がそこまで勉強しなくても、そのまま同じ大学に上がり、お嬢さんとしてお嫁に行けばよい。」と許してくれませんでした。

結局、お嬢さん大学を卒業後、大企業の事務職として就職し、結婚し、ご主人の転勤で、彼女も仕事を辞め、出産、離婚後、苦労を重ねています。

親御さんが計画されていた「お嬢さま~裕福な奥様~幸せな結婚生活~潤沢な実家のサポート」全てが崩壊しました。

夫の転勤で一度仕事から離れたら、もう二度と彼女にはフルタイムの仕事の機会はなく、夫はDV、実家は破産、離婚、元夫の独立、事業の失敗、元夫の死、と不運が重なりました。

Aちゃんのお母さんとは、よく話すのですが、もし彼女がただのOLではなく、専門職についていたら、(彼女の場合薬剤師)転居しても次の仕事が見つけやすく、金銭面での軋轢による夫との争いも少なかっただろうということです。

もし、自分に収入があれば、長年に渡る酷いDVに耐える必要もなかったし、離婚後もここまで経済的に追い詰められることもなかったでしょう。

親御さんが描いた「お嬢様~奥様幻想」も今となっては根拠のない脆いものでした。

高校の同級生の中でも、Aちゃんのお母さんより成績が悪くても、医学部、歯学部、薬学部、看護学校、工学部、教育学部といった道を選んだ人たちは、結婚、出産、夫の転勤といった人生のターニングポイントをスムーズに通過するケースが多いです。そういう人は、子供の頃から家庭の中で、きちんとキャリア教育がなされ、「一生なんとか食べていける道」を家族で話し合っていました。

「Aにだけは、私のような苦しい人生を送ってほしくない。」というお母さんの無念さ、そしてAちゃんの「毎日を安心して送れるようになりたい。」という悲願ををいつも聞いていたので、Aちゃんが中学の頃から、息子と3人で大学のオープンキャンパスにでかけ、どんな学部があるか、どんな仕事があるかを見学してきました。

Aちゃんが法律に関する仕事は安定している、なかなか面白そうだと考えるようになってからは、「日弁連のキャリアセミナー」「最高裁オープンハウス」などに連れて行き、法律に関する仕事を実際にしている方たちからお話を伺うようにしてきました。大法廷での法服試着、判決読み上げ体験、裁判官の方からの体験談を伺えて、彼女はとても楽しそうでした。

(そうそう、私達は、酒井法子主演の「裁判員制度のプロモーション映画」を見た数少ない日本国民です。最高裁で私たちがこのビデオを見た数日後、彼女は覚せい剤問題で失踪し、このビデオは永久にお蔵入りになってしまいました。けっこう面白い映画だったので、残念です。)

大人がほんのちょっと手助けしてあげるだけで、子供の将来を考える目線が違ってくるということをAちゃんから学びました。

Aちゃんのような日本の若い世代が就職、キャリアパスでこれから苦労するであろうと心配すると同時に、自分の息子のように、アメリカという世界中から優秀な若者が切磋琢磨してキャリアを登りつめていかなければならない国の熾烈さを思い、ぽーと会を立ち上げました。夫がマイノリティーとしてアメリカ企業で、苦労しているのを毎日見ているせいもあるかもしれません。

今高校3年生のAちゃんは、受験勉強を頑張っています。大学進学後の資格取得、就職活動などもこの夏、話し合いました。来年の夏は、ご褒美にアメリカに来てもいいとお母さんから言われているそうです。英語が得意な彼女には将来活躍の場が広がるよう、色々見学をさせてあげたいと、今から楽しみにしています。

私個人ができること、ぽーと会が企画できることは、本当にわずかですが、一人でも多くの若者の道しるべになれたらいいなあと、いつも願っています。世の中の状況が変わっても、若い時期に間違った選択をしたとしても、あとから仕切りなおしをすれば、なんとか一人で最低限食べていけるだけの(できれば、子供も養っていけるような)手職があるように、大人たちがサポートしていけたらと、ささやかな夢を持っています。





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