2012年4月6日

J君 (4)



J君は今年の夏、私と息子と3人で日本に行くことになりました。

J君の親御さんは日本人ですが、事情があり、一緒に住むことができなかったくらいですから、J君はみかけだけが日本人で、言葉も文化も知りません。日本に一度も行ったことがないだけではなく、アメリカの日本人コミュニティーとも全く接点なしに暮らしてきました。里親さんは、愛情いっぱいに彼を育ててくれましたが、学校、近所といった周囲の人たちから、日本人ということでひどい差別を受けて苛められたそうです。日本人としての心のよりどころや誇り(文化、親からの愛情、言葉)がない中で、日本人として苛められ続けたことが、トラウマになってしまいました。

日本人として根っこのないことが、彼の心の大きな闇と空洞になっているに違いないと思い、「私たちと一緒に日本に行ってみない?」と誘いました。「クレイジー」と一笑に付されるに違いないと思っていたら、「行くよ。」と即答でした。

日本のご親戚で会ってもいいと申し出てくださる方もいて、感謝です。私と息子はJ君を待ち合わせの場所に連れて行き、通訳をすることになりました。親族の方と素晴らしい時を過ごしてくれると思います。自分に容姿の似た人を見ることで、ルーツを確認でき、安心するではないかと思います。

私のホームグラウンド広島の家族、親友たちも本当に喜んでくれて、J君がどうしたら日本を楽しめるか色々計画を練ってくれています。宮島の鳥居、瀬戸内海を一望できる宿など、手分けをしてリサーチしてくれました。

両親は、下見もかねて、料理屋さんに試食にまで行ってくれました。「日本へようこそ!! J 」というメッセージ付のケーキのオーダーも受け付けてくれると喜んでいました。

外科医の兄は、重篤な患者さんがいなければ、数日病院を休んで、広島空港に迎えに来てくれて、どこでも好きな所に車で連れて行ってくれると申し出てくれました。J君が一人で泊まるのは寂しいだろうから、一緒に泊まってくれるそうです。J君が英語の得意な兄とくつろいでくれるといいなあと思います。内科もこなせるガイドさんなので、道中、骨折しても、風邪を引いても大丈夫です。(そんなことがあっては困るけど)

みんなが「彼は今までたった一人でアメリカでがんばったんだから、日本に来たときくらいは、私たちに任せといて!甘えてもいいんだよ!」とJ君が喜びそうな企画をしてくれています。

私たちは、血は繋がっていないけれど、おじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんとして、J君の日本での根っこになってあげたいと、「チーム J」を結成しました。

J君が喜べることをみんなで相談していると、うきうき、わくわくしてきます。私たちに幸せを運んできてくれたJ君はありがたい存在です。私たち一人一人の心の奥深くに潜んでいた「優しい気持ち」「誰かを大切に思う気持ち」を引っ張り出してくれました。

ありがとう!!

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